桐生大輝の生態
第16話
side 雫
旭を産んでいる間休学していた大学。
休学ばかりの私が漸く卒業できたのは、去年だった。
途中で辞めてしまう道もあったのだけど、玲の隣にいる以上、学ぶという行為は辞められなかった。
きっとこの世の全ての知識を頭に入れたとしても私は満足しないと思う。
全てを見通す玲は、勿論その情報を全て把握する能力を兼ね備えている。
大学に行く必要もないほど、玲の知識は豊富だった。
それでも、現代において学歴は、その人を測る材料になる。
玲はそんなものに縛られる人ではないけれど、この国一の大学の卒業資格は、ほんの一握りの人々だけが取れる、貴重なもの。
それを”暇つぶし”で取った玲には敵わないけれど、私は少しでも、玲を支えられる存在でいたい。
それには、玲の話す言葉が理解できないようではいけないから。
「奥様。」
私をそう呼ぶのは、桐生先生。
相変わらずの穏やかなその表情は、ほんの少しだけ皺を刻んでいる。
「少し、ボーッとしていました。」
「……そうですか。」
桐生先生の検診の日。紅茶とクッキーを前に、相変わらずの穏やかな時間が流れている。
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