第15話

玲には、それに耐えうる"強さ”はなかった。



人に失望すればそれを捨てればいい。そうしてきたし、そうすべきだったから。



だから、地平さんが。


一歩歩み寄ってほしい。



「雫。」


「っっ、」



思わず見つめ合っていたようで、玲の鋭く尖った声に肩を震わせた。


恐る恐る視線を下げれば、冷たいその目が私を見上げている。



金色の眼は、獰猛に揺らめいていて、それに宿る嫉妬の炎は私を焼き尽くそうと笑っていた。


フ、とそれに”笑い返した”のは、


「何がおかしい。」


嫉妬は、玲が私を見ている証拠だから。



「玲が、可愛いからですよ。」



私の言葉に目を見開いた玲は、しばらく固まった後。



ゆるゆると、破顔した。



「変なことを言うな。」


「フフ、そう思ったからそう言ったんです。」



私と玲は、壊れることはない。


だって私たちは2人で支え合っているから。



私たちを支えている支柱は、それぞれがお互いの存在。



それが壊れるとしたら。



私たちの存在は消えてしまうだろう。



「母さま、父さまが照れています。」


「……違う。妙なことを言うな。」



その時そこに旭がいるのは、耐えられないから。



この場所を、守りたい。全てを賭けて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る