第14話

彼の上げられた瞳に宿るのは、信念と純粋さ。



自分とは、正反対だと。


そんな彼に、地平さんが、蒼羽さんが、海渡さんが、惹かれるのではないか。


玲はそれを”確信”していた。



その考えはとても愚かなこと。



だけど玲にそう思わせたのは、


玲の奥底に眠っていた、恐怖心が目覚めたから。



恐れは不安を招き、増幅し、それが朝陽さんへ向かった。



苦しみ喘ぐ玲の目は、地平さんを見て、失望に伏せた。



憶測でしかなかった″確信″が、現実となったのだから。




今玲を見る地平さんの真っ赤な瞳は、冷静な彼らしくなく動揺を写している。



信頼関係はあったはずなのに。



失望した玲が心を閉ざしたことでそれは、他人よりも遠い存在となってしまった。




玲の頬に手を滑らせれば、目を閉じた彼は私に身を委ねる。



だから私は今のうちに、”玲を見るべき目”を地平さんへ向けた。



「っっ、」



言葉にはできないけれど、想いを込めたつもり。



どうか、どうか。



『玲を、見捨てないであげてください。』



と。



絶対的な信頼関係なんてない。


人と人が付き合う時、それは揺らぐ時もあれば、壊れることもある。

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