第7話

襖がツイ、と開いて、黒い影が姿を現した。



「蒼、おいで。」



私がそう呼べば、蒼のしっぽがゆるりと揺れる。



私が拾った時から、8年が経っている。少し老いが見えてきた蒼は、それでも、その金色の眼に若さを灯していて。



凜とした立ち振る舞いは、その老いを感じさせない。



私の手に鼻先を乗せたこの子は今、使命とばかりに旭を守ってくれている。




「蒼は僕といるよりも楽しそうですね。」



憮然とそう言う旭になつかないらしく、本人は不満そうだけど。



「蒼は貴方が大好きよ?」



蒼が、好きでもない人に四六時中付いている訳が無いから。



クスリと笑みを零した私の言葉に納得がいかないのか、旭は不満顔を崩さない。



「お父様よりは、仲がいいでしょう?」


「それはそうです。」



当たり前だ、とばかりにため息を吐いた旭は、本当に3歳の子供なのかと思うほど。



言葉もほぼ大人のように話すこの子はもう、普通じゃ無い雰囲気を纏っていた。



「どういう意味だ。」


「いつも喧嘩しているでしょう?」



眉間に皺を寄せる玲に、至極冷静に言葉を返す旭。思わず蒼と視線を合わせ、笑い合ってしまう。

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