第6話

旭は、玲に似ている。似ているというものじゃなかった。


地平さんへ向けるその冷たい目も。桐生先生に向ける楽しそうな目も。


唯一違うのは、両親に向ける、温かい目。



それだけで、この子にはまだ味方がいるのだと、母親として安心していた。



玲には、味方がいなかった。全てを信用せず、全てを拒否していて。



私が来たことでやっと、玲に弱さが生まれた。



それは、玲にとって良くないことだとしても、玲は私と出会ったことを後悔はしないだろう。



だけど私は、今の玲も必要だと思う。



人の弱さを理解すれば、より強くなれる。人とは不思議なもので。


弱さを知ることはとても重要。



学ぶということは、失敗を繰り返した方がより、上へと行けるものだから。



玲の場合これ以上、上へと昇ってしまったら私たちは置いて行かれてしまうけれど。



玲ならきっと、私も連れて行ってくれるから。



そして旭は、偉大な父親を見て。



この世界の神となる。



とても、温かい、父親を超える、神に。


それが、玲の望みだから。




「旭、地平に面白さなんてないぞ。遊ぶなら海渡とかどうだ。」


「父さま、地平だから面白いんですよ。」



その含みのある言葉に苦笑いしてしまうけれど。

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