第5話
弱い私を見ていたその強い瞳は今、弱弱しくて。
私の胸に顔を埋めるその心は、殻に閉じこもっていた。
それでも。
京極玲としての日々は続いて、神として君臨し続けていて。
玲はそれを、立派にこなしていた。
父親としても。
「旭。」
「父(とう)さま。」
”裸で”、だけど旭を膝の上に乗せるこの人はあの日私が望んだ通り、旭を愛してくれている。
「楽しかったか?」
「はい。」
玲が優しく撫でるのは、自分と同じ、真っ白な髪。
その光景を見ていて、旭が生まれた日を思い出した。
生まれてすぐ胸の上に乗せられた彼は、真っ白な美しい髪色で。
その時見えなかった瞳は、この部屋でキョトンとした表情と共に見ることができた。
『そっくりですね。』
桐生先生が、うんざりとした声でそう言ったのを覚えている。
京極家の妻は、病院では生まない。
出産専用の部屋で、専用の医師に囲まれて、生むことになる。
勿論不安でいっぱいだったけれど。
蒼が、桐生先生が、なにより玲が、私に付いていてくれたから。
そして、すんなりと生まれてきてくれた旭は。
「父さま、地平がつまらないんです。」
「そうか。そりゃそうだろうな。」
「……。」
”少しだけ”ひねくれている。
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