第4話

玲にとっての朝陽さんの存在がどれほどのものか。それは私には分からない。



だってあの日以来もう、玲は朝陽さんのことは話に出すこともないし、これからだって口にすることはないだろうから。


それは、彼の存在が軽い訳じゃ決してない。



その逆かもしれない。



そう感じたのは、


あの日以来、


玲が私以外に笑顔を見せなくなったから。




朝陽さんは確かにあの日、従者たちの心を揺らした。京極玲という絶対的な神の存在に疑問を持った人もいたと思う。


それを感じた玲の落胆は、寂しさは、計り知れない。


京極玲が京極玲であることは絶対条件で、変えようのないこと。



そして、玲は生まれた子供に名前を付けた。


その旭という名前に…朝陽さんへの気持ちよりも重く感じたのは、玲の願望。


自分のような神にならないよう旭には、朝陽さんのような存在になってほしい、と。



そんな、親としての願いを感じた。



玲、


玲、


玲。



お願いだから。



自分を、狗神としての自分を、否定しないで。



あの日露呈した玲の弱さは、今の玲を、弱くしようとしていた。

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