第3話

『……よろしいですか。』


「はっ、あ!?」



疲れ切ったその言葉が襖越しに聞こえたことで飛び起きた私は玲を気にする余裕もなくベッドから抜け出した。



急いで近くにあった寝間着をとりあえず羽織って、まだ見ぬショーツを必死で探す。



「雫。」



その声を聞いて玲を見れば。


「れ、玲っ、何か着てくださいっ、」



あられもないその姿は、目のやりどころに困ってしまう。



ベッドの上、裸で胡坐をかくその人は、どこを見ても真っ白で。



最近やっと、玲が色白であることに気付いた私は、そのあまりの美しさにこの体に魅入ってしまう時がある。



……変態チックだけど。



「好きだろう?」



地平さんが今にも入室してきそうなのに、私を堕落させようと誘いをかけるのは、この世の神。


……神様なのに。



「好きですけど、今は違います。」


「……なんで時と場所を選ぶんだ。」



結局、その神様に私は誘惑されてしまう訳だけど。




私と玲が結婚して、5年が経っていた。



子供の旭は、もうすぐ3歳になる。



玲は、子供の名前を決める時。



『旭は、俺の子だ。』



それだけを言った。



それが、旭なのか、朝陽なのか。私には分からないけど。

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