第50話

「さて、早速攫われたようですが……」





車を停めた姫山は、振り返って笑った。




「どうされます?」





試すように、期待するように。




俺の一言で俺だけでなく、芽依の運命まで変わってしまうかもしれないのに。




「動け。」





俺には、芽依を見捨てるなんて考え、到底思いつかなかった。




「承知いたしました。」




姫山が、ニヤリと口角を上げる。




その表情はまるで、これから楽しい余興に挑む子供のように無邪気だった。

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