第48話

side 理人



「いや~、芽依ちゃん、なかなかいい子でしたね。」


「……。」



俺も夏樹も、無言で答えているというのに、姫山はさっきから喋りっぱなしだった。



「ほんと、助かりましたよ。」



先ほどと違うのは、言葉遣い、そして。


「彼女の存在は、俺にとって天使そのものだ。」


表情、そのもの。



バックミラー越しに俺に笑いかける姫山の纏う空気も、目で訴えてくるそれも、芽依の前では微塵も見せなかったものだ。



「さて、どうします?理人さん。」



俺にそう問いかける姫山は、自分が優位に立っているとばかりに眉を上げて見せた。



「姫山。」


「は。」



そんな立場ではないくせに、こいつは俺への”敬意ある姿勢”を崩さない。


こいつの態度ははっきりしている。自分は俺より下だと、そう”決めている”。


「芽依に、見張りをつけてくれないか。」


「……今すぐに。」



俺の苦渋の表情に勝ち誇ったような表情を見せるこいつが動かせる人間は、俺が思っているよりも多い。



「理人さん。」


この、夏樹だけが、例外だ。



「なんだ。」


助手席の後ろに座っている俺からは表情が見えないが、夏樹が聞こうとしていることは分かる。

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