第47話

《……何を言い出すかと思えば。》

「ごめん。だって私が姫じゃなくなったら。理人くんたちもいろいろ影響あるだろうし。》



好奇の目で見られることは必須だし、こんなにメソメソ言ってる私といてもつまらないだろうし。



……、どうせ、1人だし。



《……2人なんですけど。》

「モリは私じゃん。」



モリは、私。本当の1人よりはマシかもしれないけど、私達は、1人だから。



《そりゃ、そうだけど。》



モリがそう呟いた。思わず、地面に視線を落とす。



その瞬間。



ガツッ!



「っっ、」



頭に、大きな衝撃と痛みを感じた。



「あ~あ、ちょっと強く殴りすぎたっぽい。」


「うわっ、血ぃ出てるじゃん!」



思わず道路に膝をついた私の視界の端に、汚いスニーカーが2人分映って、聞こえてきた声は、あまり好きになれそうにない声だった。



強い痛みの中、視界がかすんでいく。



「ああっ、お姫様っ、だいじょぶですか~?」


「大丈夫じゃねえの?頭の血って大げさに出るけど案外大丈夫らしいし。」



かろうじて保った意識の中見えたのは、明らかな不良の2人で。



「……運べ。」



その2人の後ろでたばこを吸っている男は、自分の背後に停まっているバンを顎で指してそう言った。



「あいあいさ。」


「はいはい。」



そう言って2人が私の体を持ち上げた時、私の視界は、闇に覆われた。

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