第44話

ウインクまでしてきた彼に、どう返せばいいのか。



「あ、ありがとうございます?」



どうにも、思いつかない。


「ふ、当たり前だよ。君は私にとって、好機を運んできてくれた天使だからね。」


「やめろ。」



首を傾げた。その言葉の意味が分からない、それもある。でもそれ以上に、隣の理人くんの機嫌がどんどん悪くなるのを感じたからだ。



「まぁ、とにかく、ありがとう。存在していてくれて。」


「……どうも。」



でも、意味分からないけど。なんとなく。私の存在そのものに感謝されると、嬉しかったりする。思わずはにかんだ、のに。



「私的にはありなんだけどね。ごめんね。君を食べたら私の存在自体が消されちゃうかも。」


「……は?」


今のセリフで、この人の存在自体が胡散臭くてしょうがなくなってきた。



「……はぁ、聞き流しとけ。ちょっと頭おかしいんだこいつ。」


「……理人くん。叔父さんに向かって頭おかしいはないでしょ。」



なんとなく、落ち着かない感じ。理人くんがなんとなくピリついてる感じがするし、なんとなく、叔父さんも、私を通して理人くんをからかってる感じだし。



でも、とにかく。


「あの、送っていただいて、ありがとうございます。助かりました。」


「ん?……ああ、いいよ。どうせ暇だったし。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る