第43話

いや、裏切られたっていうのは違うかも。


だって麻世ちゃんは幸樹くんの婚約者なんだから……


「私は遊びって、ことだもんね。」

《違うでしょ?》



「でも、遊びなら私、そうってことじゃん。」

《……何が言いたいの?》



分かってるくせに。


「私、私は、」


結局、誰にも、愛されてない。



《そんなこと、ないっ、》


私達は、おかしい。昔から一緒にいる私達はやっぱり、周りから見れば頭のおかしい子で。


だからこそ、私も、モリも、人に簡単に心を許したりしなかった。



でも、幸樹くんに出会って、人と接する、”ぬくもり”みたいなものを感じた。信じてみたい、そう思ったんだ。


なのに結局、幸樹くんの優しさも、笑顔も、なにもかも。



「嘘だったじゃんっ。全部っ。」

《……芽依。》



また、目から涙が溢れてきた。泣いても泣いても、きっとそれは止まることはないんだろう。


最低な気分だった。とても。



「私は、君のことが好きだよ。」


「……へ?」



だけどそんな甘い言葉が、”運転席”から聞こえてきたことで、涙は止まってしまったけれど。



「……おい。」


不機嫌そうに理人くんが声をかけるも、理人くんの叔父さんはバックミラー越しに私に笑顔を送ってくる。

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