第42話

side 芽依



「……わり。」


「ううん。大丈夫。」



理人くんが困ったように笑った。これまでにそんな笑顔は見たことがなくて、正直少しドキッとした。



理人くんって普段、口は悪いし、愛想も悪い。性格も悪いけどいつもさりげなく優しい、そんな人だった。



教室で、一緒にいることも心地よくて、Darkの姫である私にも普通に接してくれるし、何より”モリ”が心を許してる。



そんな人これまで、いなかったから。



そんな私も理人くんには悪態もつけるし、なんていうんだろ。普通。普通の人として、接することができた。


それって結構、私たちには重要なことで。



芽依も、モリも、普通に話せて、何より私自身が、飾らないでいられる。


理人くんの隣って、楽で。楽すぎて。とても、心地よかった。



もちろん理人くんのことは友達として好き。


それ以上の感情なんてない、って言えるけど、結局この人は男の人で。だからふと、こんな男らしいことをされちゃうと心臓がはねてしまう。




恋愛経験の乏しい私の心は、ずいぶんお気軽にできているらしく、このくらいのことでも少しだけ、心臓が反応してしまう。


情けないやら、なんやら。だからきっと……幸樹くんにも裏切られたんだろう。

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