理人の正体

第39話

side 理人



《ごめんっ、理人しか思い浮かばなくてっ、》



頽れるようにモリが地面に額を付けた。砂利だらけのアスファルトの上だ。ジーパンにジャージという格好だとしても痛いだろうに。



地面に土下座するように体を伏せているモリの手が、地面の砂利を取ろうとしているかのように何度も何度も、握られる。



「ごめんっ、理人くん、」


芽依が悲しみに染まったその声を俺へと向け、


《ごめんっ、》


モリはただ、俺に謝ることしかしない。



「お前ら、とりあえず立てば?」



その声にも、こいつらは頭を上げることはなくて。



「ほらっ、っっ!?」



イラついて無理やり立たせたことで、ようやくその理由を知った。



くしゃりと、顔が歪む。



誰でもなかった。



悲しみに染まった目はうつろで、それは芽依でもモリでもなく。



体は全ての機能を失ったように、力そのものが抜け落ちていた。



「っっ、」



思わず芽依を、抱きしめた。



手が届かなかった。いや、届くはずのなかった俺たちの距離。


思わず、俺から、一歩前に出てしまった。




芽依の華奢な体は、震えることもなく、ただ俺になされるがまま。



壊れた。そう思った。

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