第35話

今日という日をワタシ達がぶち壊すわけにいかない。



元姫のみなさんや、仲間だった奴らのためにも。



踵を返したワタシを、篠田幸樹はもう止めたりはしなかった。



虚しさと寂しさ。浮かぶそれは、ワタシの心をさらに苦しめる。



こんな裏切り方ってない。そう思うのに。


まだワタシの、芽依の心がこの男を好きだって叫んでる。



情けない。馬鹿みたい。



だけどそれが、恋なのかもしれない。



結局、異質のワタシ達には、幸せは来ない。



《ごめんね、芽依。》

「ううん。私こそごめん、モリ。」



お互いに誤って、お互いに苦笑して。


汚い倉庫の裏口の戸を開けた。




「お、芽依じゃん。何してんの?」


「《……。》」


ヤンキー座りでたばこを吸ってるめんどくさい奴がいる。そう思ったけど。



《帰るんだ。》



どうやら芽依は、この清水英輔との別れも辛いらしい。陰に隠れてしまった芽依の変わりに、芽依として返事すれば、眉間に皺を寄せた清水英輔は立ち上がる。



「なんで?今励んでるはずだろ?あ、怖気づいたとか?」



すぐにそれを笑顔に変えた清水英輔はどうやら、うすうす感づいてるらしい。

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