第31話
『……ぃ、おい。』
《あ、ごめーん。まだ繋がってたっけ。》
『阿保。』
ちょっと。仮にもお友達のワタシ達に阿保なんて暴言吐く?
《ほんと口悪い。芽依に嫌われるよ?》
『……。』
ワタシ達にも、隠し事はある。例えば、この雨音理人のこととか。
やり方は簡単。頭の中にある引き出しを閉めればいいだけ。
同じ体にいる、同じ”人間”であるワタシ達の、唯一持っている別々の引き出しには、お互いの秘密が隠されている。
それをさらけ出す日は来るんだろうか。はたまた、ワタシ達どちらかが”死ねば”解放されるんだろうか。
『はぁ、時間が時間だし、家の車で行く。』
《え”、Darkの倉庫なんだけど、親御さんびっくりしない?》
息子に頼まれて向かった先が暴走族の本拠地なんてワタシなら断るんですけど。
『親じゃないし問題ない。』
《……そ。》
確実に!何か事情があるくさいけど、迎えに来てくれる訳だからここは甘えちゃうことにする。
通話を切って今度はきちんとジーパンの後ろポケットに差し込んだ。
歩き出せば、篠田幸樹がワタシ達の進路を塞ぐ。
不愉快でしかない。芽依が今、膝を抱えているというのに。この涙の原因を作ったくせに。
ゆっくりと、目の前の男を見上げた。
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