切り替え彼女【完結】

第30話

「……どういうことだ。」

低い声に顔を上げれば、篠田幸樹が不愉快そうに顔を歪めてこちらを見ていた。

ニヤリと口角を上げる。

《当たり前でしょ。貴方、ワタシ達が気づいていないとでも思ってたの？》

「……。」

探るようなその視線。さすが、族の頭張ってるだけあって順応するのが早い。

酷い人間はワタシ達を気味悪がるっていうのに。

《アンタが少しずつ芽依から距離を取ってたのは分かってた。》

「っっ、」

芽依が閉じこもるのを感じた。聞きたくないそれは、ワタシが感じて、ワタシが口にすることで芽依にも伝わる。だけど少しでも自分を傷つけないために、芽依は耳に手を当てて閉じこもった。

篠田幸樹から感じていた”距離”それは芽依を不安にさせていた。

護衛は減るし、彼氏のくせに忙しいを理由に姿を現さないし。そのくせして芽依といる時はやたら優しい。

普通なら、別れるつもり。そう考えてもおかしくはない。

「違う。俺は、」

《どうでもいい。あんたの言い分なんか。》

言葉の続きを聞くつもりはない。時期的にも、さっきのやりとりを見ればしっくりきたし。

婚約者がいるから、芽依を切り捨てた。そういうこと。