第28話
問題の名前をタップして、スマホを耳に当てた。
プッ、プッ、プッ、『……どうした?』
すぐに出た相手。それだけこいつの”焦り”を感じて、安堵のため息を吐いた。
《久しぶり。》
『……モリか。なんの用だ。』
ぶっきらぼうなその返事は、ワタシにも芽依にも変わらず。
正直、驚いてる。ワタシと芽依を見て少しも態度を変えないのはこの男くらいだから。
「え、なんで理人くん?」
《迎えに来てよ。》
『「は?」』
電話先と芽依の声が被るってミラクルよね。思わずクスリと笑ってしまう。
めっちゃテンパってる芽依を無視して、ゆっくりと視線を篠田幸樹へと向けた。
それだけで、”芽依”の目から涙が流れる。
「っっ、」
目を見開いたままの篠田幸樹は今、混乱を極めているだろう。
篠田幸樹の背後にある窓に写る自分は、口元は笑って、目からは悲しそうに涙を流している。
《知ってた?芽依、たった今捨てられたの。クソ野郎に無残にね。》
『……。』
「っっ、」
心を閉ざす芽依。傷ついたように顔を歪める篠田幸樹。そして……
《私は、貴方に頼みたい。》
芽依を、抱きしめる役を。
「えっ、なに言ってるのモリ!」
叫んだ芽依が、窓に反射して自分自身に訴えかける。そう、自分自身であるワタシ、モリに。
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