第25話

それを呆然と見ていた麻世ちゃんは、ゆっくりと顔を上げて。



いつも私が羨ましく思っていたその綺麗な顔を、笑顔で彩った。



「芽依。ごめんね。私のモノを、返してもらうわ。」


「……。」



とても嬉しそうに笑う麻世ちゃんは、勝ち誇ったように首を傾げてみせた。



バンッ!!



その瞬間、背後で勢いよく扉が開いて。


「ハッ、っっ、芽依っ、」


”いつもの”香りに、包まれる。



痛いほどの抱擁は、嗅ぎなれた香りは、私の心を壊すつもりみたい。



胸が苦しい。息もできないほどに。


「っっ、くっ、っっああ、」


「芽依。芽依。」



涙が流れ続ける。とめどないそれは、私の意識をゆっくりと……



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