第16話

「しばらく、帰れない。」


「……うん。」



9月8日まで、あと3日。



それまでどうやら、会えないらしい。



「少しでも?」


「……ごめん。学校には行けないから。」



幸樹くんが私の頭を撫でたら、それは困ってる時を意味する。


私が頭を撫でられるのが大好きなのを知ってるから、ごまかそうとしてるのかもしれない。



だけど、幸樹くんを困らせたくなくて。


「大丈夫。」



そう言って、私は笑う。



「ああ。ほんとにごめんな。」


「うん。」


そう言って幸樹くんが、踵を返す。



「「「お疲れさまです!!!」」」



下っ端くんたちの掛け声の間を、たばこに火を点けながら、ゆっくりと進む。



かっこいい背中だ。



この場所の仲間たち、みんなを背負ってる背中。



そんな人が、私の彼氏で。



だからこそ、私も姫として、身を引き締めなくちゃいけない。




「ふふふふふ、聞いたぞ!」


「ハッ!」



幸樹くんが出て行ったあとのこの場のどこからともなく響いたその声で我に返ったけど。



「聞いた!俺は聞いたぞ!」


「なななな、なにを?」



下っ端くんたちをかき分けて出てきた金髪。そいつは嫌に尖った八重歯をのぞかせて、意地悪そうに笑った。

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