第15話

もともとデートらしいデートもしてなかったんだけど、必ず会えてた倉庫にもあまり帰ってこないし、朝と放課後は必ずあった私の迎えも少なくなった。



幸樹くんもみんなも、他のチームとの問題で少し忙しい。そうとしか教えてくれなくて。



「芽依、」



離せとばかりに、幸樹くんの腕に力が入る。もう少しだけ。そう思って、首を横に振ってみせた。


「芽依、もう行かなくちゃ。」



でも結局、申し訳なさそうにそう言われてしまえば、私は素直にそれを聞くしかない。



「ごめんな。」


困ったように笑って、幸樹くんが私の頭を撫でる。そんな仕草もかっこいいなんて、すごくずるい。



「ううん。大丈夫。少し甘えたくなっただけ。」


「……そんな、煽んなよ。」



苦笑する幸樹くんの言葉に目を見開いた。



「そっ、」


「そんなことないんだろ?」



口を尖らせて頷いた。いつも私の言葉の続きを言ってしまうんだから。



結局、私は幸樹くんには勝てない。



幸樹くんが忙しいと言うんなら、そうなんだろう。



このチームをまとめる幸樹くんが、私だけにかまえる訳もないんだから、そこは我慢するのが、この人の彼女ってものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る