第11話

side 芽依



「お疲れさまです!」


「ちっす幸樹さん!」



彼らが頭を下げる中を、幸樹くんはまっすぐ、前を見て進む。



「芽依さん、こんちは!」


「こんにちは。」



「こんちは!」


「こんにちは。」



下っ端君たちは、不良だとは思えないくらいの人懐っこい笑顔で私に挨拶してくれる。


はじめは、メンチ切られたけど。


『てめぇ誰だこら。』的な視線にはほんとに震え上がったものだった。



「芽依。」



低い、男らしい声。耳の奥に響くようなその声に名前を呼ばれただけで、体の奥に電流が走ったみたいに反応してしまう。


少し立ち止まっていた私を待っていてくれたらしいその人は、早く来いとばかりに大きな手を差し出してくれる。


「うん。」


その手を取れば、その繋がれた部分から熱が広がるみたいに、心も体も、ぽかぽかになる。



「今日は送ってやれない。ごめんな。」


「っっ、うん、大丈夫。」



だからこそ、そう言われただけで、体からさっと熱が引く。



私の心を温かくするのも、冷やすのも、幸樹くん次第で。


それは私がこの人を好きなほど、落差は激しい。



篠田幸樹(しのだこうき)このチームの総長をしている幸樹くんは、高校1年生の春、私に告白をしてくれた。

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