第10話

俺はモブだ。その他大勢、がり勉、かっこいい夏樹君のコバンザメ。



そんな俺と歩くのは、この学校の人気者の彼女。だからこそ、生徒たちの視線は全て、芽依へと向かう。



しかし、芽依へと向かう好奇と羨望、嫉妬の目は、日に日に、嘲笑へと変わる。



俺はそれを見ているだけのモブにすぎない。


Darkの姫と仲がいいだけの、その他大勢。


これを俺が助けるのは、違うのかもしれない。


状況を変えるべきなのは、こいつの男か、さっきの男か。



芽依という姫を本当に想う者が、立ち上がるべきだ。



俺はこの時、そう思っていた。


芽依の涙を見てもなお、俺は芽依への想いを認めることはできず、あのクソ野郎のために無理やり笑うこいつとただのクラスメイトとして過ごすしか方法を見つけられないでいた。



『転校までしておいて、ヘタレですよね。』


夏樹が今ここにいたら、そう言うかもしんねえな。




「なに、ニヤついて。気持ち悪い。」


「……ほんと、かわいくねえ。」



思わずそう言えば、芽依は一瞬目を見開いた。そして、寂しそうに笑う。



「可愛いなんて、一人だけに言われれば満足だよ。」


「……。」


その陰りに奥歯を噛みしめたのは、芽依ではなく俺。


そしてその寂しそうな笑顔に胸が高鳴ったのもきっと俺だけだ。

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