第4話

「お父さん、なんだったの?」


「……今度、彼と一緒にパーティーに出なきゃいけなくなったって。」


「ふーん。」



麻世ちゃんの家はとてもお金持ちで、まさかのもう、婚約者なんて人が存在するらしい。麻世ちゃんが知ったのは今年の初めらしいけど、お金持ちの家に生まれるのも大変なんだなと思った。



自由に恋愛ができないなんて、私なら嫌だ。



だけど麻世ちゃんに限ってはそうとは言い切れない。



「ふーんってなによ。もうちょっと聞いて見てもよくない?」


「……だって、凄く嬉しそうなんだもん。」


「え。そ、そんなことないわ。」



嬉しそうに歪む口元を隠そうと必死な麻世ちゃんに、思わず笑ってしまう。



麻世ちゃんと友達になったのは、高校に入ってすぐのことだった。



『よろしく、鈴森(すずもり)さん。』



そう言って笑った麻世ちゃんの笑顔は、真似しようとしても真似できない。



「芽依。」



麻世ちゃんをからかう私に、冷たい声が届いて。視線を向ければ、理人くんが不機嫌そうにこちらを見ていた。



「なに?」


「……購買行かね?」


「なんで。」


「なんででも。」



理人くんの私を見る目に、強く訴えかける何かを感じる。

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