第3話

どうやらハーフらしい彼は、男らしい顔つきにもかかわらずどこか、色気まで感じてしまう。


スタイルも抜群で、鍛えているのか筋肉質な彼は、この学校でとても人気者だった。


「聞いてんの?夏樹。」


「ああ、聞いてる。」



対して、夏樹くんといつも一緒にいるこの人は。


「芽依もほわっとしすぎだろ。」



悪態を付いてばかりの、ガリ勉眼鏡だった。



でも私は知ってる。



「ほわっとしてる私が好きって人もいるもん。」


「どこの誰だそいつは。連れて来い、ハッ倒してやる。」



真っ黒な髪、真っ黒な黒縁眼鏡。鬱陶しそうな長い前髪。一見、どこにでもいそうな目立たない生徒だけど、この人の雰囲気が、人柄が、そうとは思えない何かを持っている。



だけどきっとそれに、気付けているのは私と夏樹くんだけ。



だってこの人は、それを”隠す”のも、上手い人だから。



「何の話?」



そう言って私たちの所に戻ってきたこの子の前では、無表情で、無愛想な、何も話さないただの”モブ”に、彼は変身する。



「なんでもないよ、麻世(まよ)ちゃん。」


「……そう?」



真っ黒な艶のある髪をなびかせて、桜田麻世(さくらだまよ)ちゃんはため息をついて席に座った。

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