第52話

side 雀




「消してください!今すぐ!」


「えっ、なに?」


「おいっ!なんだよお前!」




冬陽が女の方に掴みかかるのを茫然と見ていた。



「お願いっ、やめて!」




そう怒鳴る冬陽の手は尋常じゃないほど震えている。それを見た瞬間、俺の身体は呪縛を解かれたように素早く動いた。



「冬陽。」


「っっ、雀っ、」



手を引けば、冬陽が俺を振り返る。その顔は真っ青で、今にも倒れそうなほどだ。



「消してくださいっ、消してっ、」


「なにこの人っ。恐いんだけど!」




手で顔を覆って冬陽が座り込んでしまう。恐ろしくて仕方がないとばかりに震える肩は、見ているだけで可哀そうになるほどだ。



冬陽がこの怯えるブスの何にこんなに反応したのか。消してくれってことはきっとさっき撮っていた写真が原因なんだろうな。



……夜中、ベッドから消える原因と関係があるんだろうか。



とりあえず、このブスが勝手に俺たちを入れた写真を撮ったのは事実だ。俺もプライベートをSNSに流されるなんて御免だし。


削除するように言えばいいだろう。それよりも冬陽を早く家に連れて帰ろう。そう思っていた。それなのに。



「意味分かんねえ。キモイんだよ。ブスッ!」


「……あ?」



男が理解不能な暴言を吐いたせいで、俺の理性は一瞬で吹っ飛んだ。

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