第48話

冬陽が俯いた。自分の気の早さがそうさせていることに胸が痛んだ俺は、俯いて自嘲の笑みを浮かべるしかない。



「冬陽、」


「17歳。」


「え?」




もう少し待つ。そう言うつもりだったが、それを止めるようにそう言った冬陽が、俺にぎこちなく笑いかけた。



「春田 冬陽、17歳。趣味は、今はなし。夜型。他は?」


「え?あー、なんだろうな?」



自己紹介っつっても意外と言いたいことが分かんねえもんだよな。自分で聞いといて苦笑いするしかない。知りたいのは山ほどあるくせに、いざ聞かれると意外と思いつかねえもんだ。




「雀は?」


「ん?」



魚をひっくり返しながら、冬陽はチラリと俺を見た。



「私だけってどうなのよ。普通、お互いじゃないの?」


「ああ、確かにそうだな。」



考えてみれば俺と冬陽はお互いのことを何も話していない。俺が冬陽を知らないように当たり前だが冬陽も俺のことを知らないわけだ。



しかも俺とは違って、冬陽にとって俺は完全なる初対面なわけだから……そりゃ色々警戒はする、か。




「冬華 雀、25、」


「は?」



低い声の主を見れば、冬陽が口を開けたままこちらを見ている。明らかに驚いています、とばかりのリアクションに思わず噴き出した。

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