第46話
この釣り堀は、魚が飼育されている池が5つある。そこで釣った魚は持ち主の爺さんに食べる分だけを渡せば内臓を取り除くなどの基本的な下ごしらえをしてくれる。
それを少し歩いたところにある網焼き場に持って行って網で焼けば、その場で食えるという仕組みだった。
魚は、種類によって値段は様々。冬陽が釣ったウグイは馬鹿みてえに釣ってはいるが、俺の手持ちを脅かすほどではない。
網の下の炭がパチパチと音をたてて、魚の焼ける香ばしい匂いが辺りに漂う。それをただ見ているだけなのに、冬陽はとても楽しそうに笑っている。
「おにぎりくらい持って来ればよかったかな。」
いつもは釣れば持って帰るだけの俺は、今更ながら自分の用意のなさに後悔しかない。
「ううん。いい。魚だけで。」
「そうか。」
「ん。」
30センチほどの魚を4匹。裏返しては笑って、裏返しては笑う。こんなに楽しそうに魚を焼くんなら、少々の自分の失敗もどうでもいいことのように感じてしまった。
「あ、」
「どうした?」
突然、冬陽がなにかに気が付いたように声を上げる。首を傾げれば、冬陽は初めて、魚から視線を外して俺を見上げる。
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