第44話

「っっ、」


「大丈夫か?」


「あ、うん、ごめん。」




こうして、山道を歩くことで軽いスキンシップを図れると思ったからだ。



「ん。」


「え?」


「手。あぶねえから。」


「あ……うん。」



こうして恋人のように触れ合うことは、夜一緒に寝ることよりも冬陽には何倍も効くのかもしれない。




少しだけ嬉しそうに見えなくもない。冬陽の笑顔に目を細めた。




---、



「わっ!また釣れた!」


「ああ。」




冬釣り堀をしている場所は少ないが、まるでないというわけじゃない。


川釣りは年がら年中でき、冬こそ釣れる種類だっている。



ただ夏に限定されて運営する釣り堀は、冬山に来る危険性などを考慮してやらないだけにすぎないと思う。



釣り堀といえば夏にするものと思われがちだ。だからこそこの釣り場は穴場で、冬場だけあの家に住む俺は頻繁にここにやってきていた。




釣り堀はエサを付けて水に針が入れば釣れる、と断言していいほど魚がよく釣れる。だからこそ、冬陽を楽しませるには好都合だった。




結果こうして無邪気に喜んでいる。初めは少し怖がっていたものの、魚も5、6匹釣れば自分で餌まで付けられるようになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る