第43話

side 雀



「もう、大丈夫だしっ。」




乱暴に毛布を剥ぎ取った冬陽が車の助手席にそれを投げ込む。ほんとに、こいつはいちいち俺を刺激するよな。



さっき、何か言いたそうに、不満そうに口をぎゅっと結んだ冬陽。



余裕顔で笑って車から降りるていを突き通したが、確実にそれは俺の逃げだった。



車から降りてすぐ、顔が熱くて仕方なかったし。


でも言えないだろ?


体調を伺うつもりだったのに、うっかりお前にキスをしそうになった、なんて。



俺たちはまだ、知り合って1週間だ。関係はなんだろうか。恋人でもなく、知り合いでもない気がする。もちろん家族でもなく、名前を付けるなら同居人が一番しっくりくるのかもしれない。



俺と冬陽の関係には、甘さの欠片もない関係ばかりが当てはまる。それを変えたい俺と、きっと変えたくはない、冬陽。



こんなに可愛い俺の惚れた女は、思ったよりも防御力が高い。



難攻不落に近いこの城を、どう攻略したもんか。女に困ったことがない俺でもその攻略法は想像もつかなかった。



「行こっか。」


「うん。」



まずはベタにと思って、デートして距離を縮めることにした。この場所を選んだのは、オフシーズンで人があまりいないということと……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る