第42話
車内が静かだから、川の流れる音っぽいのが聞こえるけど……
「冬に?釣り?」
「ああ。正確に言えば釣り堀だな。」
そう言った雀は、私の顔色を確かめるかのように覗き込んでくる。少し、顔の距離が近くて。緊張してぎゅっと口に力が入った。
だけど、雀はそんな私を気にしてはいないらしい。
小さく頷いてすぐに顔を離すと、ニヤリと笑って車から降りてしまった。
「なによ。」
なんて。一人悪態をついてみる。デートなんて名前を付けてるからなのか。少しは彼女扱いされたい、なんて馬鹿なことを考えている自分がいる。
車を降りた雀は私がいる助手席側に回り込んできてウインドー越しに笑顔を向けてくる。
ほんとに、絵になるな。そう思いながら、笑顔に思わず笑顔を返してしまう。
「おいで。」
助手席のドアを開けて、雀が手を差し出してくる。毛布にくるまれたままその手を取れば、ゆっくりと手を引かれる。
「うー、寒い。」
「ふはっ、そんな雪だるまみてえな格好でか?」
「……そう、だけど。」
確かに私は毛布に今守られていますけれども。ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。
「……顔は無防備なもんで。」
「ハハッ、」
何がツボなのか、雀が本当におかしそうに笑うから。恥ずかしさは増すばかり。
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