第40話

side 冬陽




「まぁ、なんだ。サンキュ?」



笑い交じりの言い方はなんとなく、子供扱いされてるみたいで、毛布口元を隠したまま、口を尖らせた。



なんだか、もどかしかった。もうちょっとさらっと言えない自分が。



雀は多分、誰がどう見てもイケメンだと思う。今話題のイケメン俳優とタイマン張れるくらい。



そんな人がなんで田舎で豪華に暮らしてるのかも謎で。なぜ私なんかを拾って一緒にいるのかも分からない。



私は雀に拾われた。お世話係としてここにいるんなら、それ相応のこともすべき。なのに私は何もできていない。そしてこんな、何気ない話もさらっと返すこともできなくて……



なぜだろう、雀を前にすると大人ぶりたくなって、時折子供になりたくて、そんな私を全て分かった上で、笑って欲しい。



そして、恋愛にいまだに拒絶反応を見せる自分を少し疎ましいと感じている。



私はもしかして、この人と恋をしたいんだろうか?




チラリと雀を盗み見ると、真剣な表情で前を向いている。



「雀はイケメンだよ。」


「っっ、は?」



一瞬こっちを見ようとしてすぐに前を見た雀の慌てぶりがおかしくて、思わず笑った。はた、と気付く。こんなに楽しく笑ったのは、いつぶりだろう。




そう思ったら、なんだか涙が出そうになった。

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