第38話

「車酔いはするんだけどね、」


「ああ。」


「こんなに弱くないの。」


「そうなのか?」



毛布にくるまったままもじもじしている冬陽は気まずそうだが、それがまた可愛すぎて俺の胸は締め付けられ続ける。



男がキュンなんて言葉使うもんじゃないと思ってはいるがこれは……



キュン死しそう。



「なんか色々、考えちゃって……、」


「あ?ああ、」



自分の考えが見透かされているわけでもないのに、なんとなく気まずい俺に、冬陽が笑った。



「でも、楽しみだから。行く。」




俺は、別の場所へ逝きそうだ。



「……。」


「雀?」


「あ?」


「大丈夫?」


「まぁ、なんとか。」



お前が可愛すぎて死にそう、なんて言えるわけがなくて、照れくささに頬をかいた。首を傾げている冬陽の可愛さが今はすげー憎い。俺、ほんと1週間もよく持ってるよな。



自分の我慢弱さを自負しているから余計に誇らしいんだが。



しかし、冬陽を見ていると……


「大丈夫か?」


「っっ、うん。」



優しさとか、愛おしさがこみ上げて、理性なんか動員しなくても忘れてしまうんだよな。だから今も、さっきまで悶えてたくせして冬陽の額をなるべく優しく撫でて体調を気にしてしまう。



……冬陽が今赤くなったのは俺が触れたせいだといいな、とか願ったりはするけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る