第33話
それに、雀といるこの時間を心地良く思っている自分がいることに、とっくに気付いている。
だから……出掛けることでこの関係がまだ続くなら、と思う狡い自分がいて、純粋に喜んでいる雀を前に少し胸が痛んだ。
家もご飯もなにもかも用意してもらって、見返りを与えずにこの家に居座る私は、かなり図々しいんだと思う。
なのに、雀はそんな私に罪悪感を抱かせないようにか、まるでこの家に昔から住んでいる同居人のように接してくれていた。
「さて……ん。」
「ん?」
差し出された手から雀に視線を写せば、機嫌良く笑った雀は口を開いた。
「デートだから。手繋げよ。」
「えっ、」
突然吐かれた言葉に胸が高鳴る。少し、顔も熱い気がする。
「ふ、冗談。」
からかうように私の頭を撫でた雀の次いだ言葉に、少し落胆したのは内緒。
だけど……
「やっぱ嘘。繋ぎてえ。」
「す、」
油断したところに、手を繋がれてしまって。不意の出来事に雀の名前すらきちんと呼ぶこともままならない。
指と指を絡める、恋人みたいな繋ぎ方。
「あー、なんかいいな、これ。」
頬をかいた雀が、照れ臭そうに笑う。
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