第28話

色々なことが謎な雀のことが知りたい。だけど詮索して、嫌われたら、なんて思ってしまって……



もう、そう思う時点で私の中に、雀に対する何らかの感情が浮かんでいることに、この時の私は気づいてもいない。




「さて、相談なんだがね、冬陽ちゃん?」



朝食後、お皿洗いをしていると背後のダイニングテーブルでコーヒーを飲んでいた雀がそう切り出した。



「なんですか?雀くん?」



手を拭きながら振り替えると、朝日で後光が差しているように見えるほどの美形が優しい笑みを浮かべていた。


眩しく感じるほどの整った顔は、突然だといつ見ても慣れることはなくて、雀の顔を見るたびに、初めて会った時のように息を呑んでしまう。


顔を見るのに心の準備がいるって、どれだけイケメンなんだ。


でもそのたびに大きくなっていく鼓動のことには、どうしても気付きたくはなかった。




「デートしない?」


「え?」




頬杖をついて。雀の軽い問いかけに、一瞬何を言われたのか理解できなかった。



そのフレーズに心臓が大きく軋んで、膨れ上がる不安に押し潰されそうになる。




「っっ、」



思わず雀から視線を逸らした。雀に言っていないことは山ほどあるけれど、私の中でまだ痛みを主張しているこの傷だけは、知られたくないと思っている。



それくらいには私は、この1週間で雀と過ごすこの場所が好きになってしまっていたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る