第26話
ーーー、
「雀、雀ってば。」
「……ん?」
あれから一週間が経った。
「おはよ。」
「うん。」
とても広いベッドは足のない、直接置くタイプのそれ。
「起きたいんだけど。」
「うん。」
初めてこの家を訪れた翌朝、この腕に包まれて起きた時は、多分人生で一番、大きな声を出したと思う。
「ね、」
「もう、ちょっと、」
それなのにこの1週間でこの綺麗な顔を睨めるほどには、この人に慣れてしまっている自分が怖かった。
器用に私を抱き締めていた体制から動いていき、今度は私の腰に手を回して再び寝息をたてだしたこの人はあの日からなにも聞かずに、私をこの家においてくれている。
私を昔から知っている人のように親しげに接してくれ、衣食住、全ての世話を焼いてくれる。
この人の当初の提案では、私がこの人の世話をするはず、だったのに。
なぜか私は今、この人に甘やかされていた。
そんなこの人が、自分の腕の中で盛大に叫んだ私に笑顔で要求したことは、3つ。
”黙って出ていかない”
”自分のことを雀と呼ぶこと”
”夜は必ず、一緒に寝ること”
正直、無理難題だと思ったのは最後の1つだけ。
こんなにお世話になっているのだから、黙ってこの家を出ていく、なんてありえないし、名前で呼ぶくらい、ちょっと恥ずかしいのを無視すれば大丈夫。
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