第25話

もしや、なにかブラックな職業の方の愛人で、暇潰しで家出娘で遊んでるのかも。



そう考えている内、視界がゆっくりと歪んでいく。



スープになにか盛られた?一瞬、そう思ったけどそれはさすがに考えすぎだよね。


気の抜けない場所にいるというのに、疲れのせいか、この部屋の暖かさのせいか、それとも、満腹のせいか、明らかに眠い。陰謀なんかじゃなくきっとそのせい。



「ね、ぇ、冬華、さ、」


「……雀って呼べよ。冬陽。」


「ん、どうして?」


「は?」



少しずつ、気持ちよくなってきて、瞼も自然と下がっていく。



あったかい。眠い。眠ってしまいたい。



そう思えばもう、私の中に理性なんて欠片もなくなっていた。



「どうして、私を、」



ここにつれてきたの?



目的を聞こうと放たれた言葉は、届いただろうか?





「お前をずっと待ってたからだ。もう、離さねえよ。」




私の額を撫でて冬華さんが言ったことは、眠ってしまっていた私に聞こえるはずもなく。




そしてこれから始まる生活も、全く予想もつくはずもなかった。




冬華雀という男は、私至上、きっと一番厄介で、最悪で、最高の人。

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