第22話

「えっ、ちょ、冬陽!?」



焦る男を前に、涙が止まらなくなった。



「私のばかー!」


「は?」



こんな、危ない男に引っ掛かって。何がこれから一人で生きていく、よ。



最悪。これから私はきっとこの男に襲われて、脅されて……



「死ぬっ、かも。しっれ、ない!」


「はぁ?」


嗚咽が止まらない。



”どちらか”迷っていたくせに、自分の命がとても惜しくて。




やっぱり私に、死ぬ勇気はない。こんなにも生きたいと、心が叫んでるんだから。



覚悟をしてきたつもりだった。なのに実際は覚悟なんてできてなくて。こんなにも、心細い。



両親に会いたい。それでも、戻れない。



死にたい。死にたくない。




……生きたい!



心でそう叫んだ時だった。



「っっ、」


「ドードー……。」



ふわりと香ったのは、何かの甘酸っぱい香り。



「お前マジで、変だな。」



笑う男はやんわりと私を抱きしめ、落ち着かせるように後頭部を撫で続けている。



久しぶりに感じた、人のぬくもり。恐いはずなのに、どこか安心する自分もいた。



これから私に酷いことをしようとしている男のはずなのに、あまりにも優しく抱きしめるから。



思わず、その温かさに、縋ってしまいそうになる。

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