第21話

だけど……



手は振りほどけるどころか、もっと強い力で握られてしまう。それにも身体が強張って、恐怖は更に増していく。


だけど俯いた私の頭の上に、温かくて、大きな手が乗って。



「ごめん、恐かったな。」



そんな謝罪の声は、優しく私の耳に届いた。




「あ、貴方は、何者なんですか?」



恐る恐る放った私の質問に、冬華さんはクスリと笑った。



「まるでサスペンスドラマのセリフみてえ。」


「っっ、笑いごとじゃ、」



身体の震えはどんどん増して、恐怖に抗えず目に涙も浮かんでくる。



どんな家を想像していたわけでもないけど、ここまでお金持ちそうな家だとは思ってもいなくて。



ここを自分の家だというのなら、この人はかなりの金持ちで。



その辺に捨てられたナンパ男の線は消えてしまった。ナンパ男でも危険だったのに、突然突き付けられた現実は、更に最悪な事態を暗示させてならない。



お金持ちが、私みたいな家出娘をこんなところまで連れてきて、どうするの?



ネットや漫画、テレビでよく見る暗い事件しか想像できず、自分の身が危ないことを悟った。



そうなってみると自分がどれだけ愚かなことをしたのかを突きつけられて。

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