第20話

side 冬陽




グイグイと手を引かれ、訳の分からないまま連れてこられたのは。



「俺の家。」


「……はぁ?」



とんでもなく、オシャレな家。



思わず真っ暗な田舎道とその家を振り返り振り返り見比べてしまうくらいには、この家の存在は都会的すぎて、この場所には似合っていない気がした。


郵便受けが見えた辺りから、田舎道は温かい光に照らされていた。





曲がってすぐにドンと目に入った家は3階建てで、レンガ作り。そして横にも縦にも広い。それを囲む広い庭。玄関の傍に無造作に停められている車は、誰もが知っている高級車の四駆だった。



「展示場、とか、」


「ぷっ、展示場でもこんなのねえだろ。」



私を馬鹿にしたように笑う冬華さんに、ムッと口を尖らせた。



「分かってますけどっ、なんか、」



理解の範疇を完全に飛び越えている豪華すぎる家に、驚きを越してもはや恐怖が湧き上がる。



ここで私、何をされるの?




「っっ、」



身体が震え出した。震えを止めたいのに、身体は恐怖に忠実に動く。恐る恐る冬華さんを見上げれば、彼は固い表情で自分と繋がっている私の手を見ていた。



それは小刻みに震えて、冬華さんの手にも伝染している。


なんとなく、それがばれてはいけないような気がして、彼の手を振りほどこうとした。

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