第18話

歩きなれた道。この時間ならまだ、慣れているせいかライトがなくてもすいすい歩ける。



「俺の家、ちゃんと広いから。冬陽のプライベートはちゃんと確保できる。」



本当は、お前の部屋もありきで生活していたと言ったら、引くだろうな。そうだろ、普通。



思わず苦笑いを零して、冬陽を振り返れば……



「あれ?冬陽?」


「こ、ここです、冬華さん!」



暗闇の奥、助けを求めるような冬陽の声が届いた。


スマホでライトを点けて冬陽がいる方を照らせば、立ち止まったままこちらを不安そうに見ている冬陽がいた。



「そんな速足で行かれたらっ、」


「あ、わりい。」



俺には通り慣れた道。しかし冬陽は違う。



夜目に慣れろと言うにはさすがに無理がある。



あ、それなら。



「っっ、」


「よし、これでいいだろ。」




冬陽の手を握って歩き出した。恋人繋ぎじゃないが、俺は冬陽と手が繋げて嬉しいし、冬陽は夜目が利かなくても歩けるし、一石二鳥だろ。



「あの、あ、」


何かを言いたげな冬陽を無視して、鼻歌交じりにつき進む。



……鼻歌なんてマジで、何年振りだろ?

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