第17話

そんな動作も可愛くて。思わず抱きしめてしまいそうになった。



「呼んで。冬陽。」


「っっ、」



俺のおねだりに冬陽が照れたように視線を逸らし続けることで、こいつが男慣れしてないように見えて妙に安心する。



「す、雀?」


「っっ、お、おう。」



そして恐る恐る紡がれた自分の名前に大興奮したのは、苦笑いしか出ないが。


名前呼ばれたくらいで照れるなんて俺は乙女かっての。



それを誤魔化すように冬陽のカバンを持ち上げた。



「あっ、」



冬陽がそれを見て何かを言いたげにしてるが、こんな重い物を女に持たせるわけにいかない。


マジで一体何が入ってんだ?そう思うほどのなかなかの重さだった。



「人質。……物ジチ?」




ほんとの理由を正直に言えばいいのに、一応そういうていだからそう言うことしかできないのが歯がゆい。



「はぁ、そんなことしても逃げたりしません。」


冬陽に呆れられてしまっても、笑ってごまかすしかない。


「こっち。」


「……はい。」



駅を背にして歩き出せば、冬陽も仕方がないとばかりについてくる。



こいつとここを歩く日が来るなんて。分かってたのに現実になるとマジで感動する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る