第12話
side 雀(すずめ)
女を見た瞬間、俺は”毎度”恋に落ちる。
猫のように挑発的な目。鼻は、一本筋が通っているようにシュッとしていて柔らかそうな唇は俺の喉に渇きを与える。左寄りに分けられた黒く長い髪は緩く巻かれ、女の肩にかかっていた。
何より鼻先が少し赤いのがまたポイントが高い。今すぐ舐めて温めてやりたいほどだ。
格好は、【家出娘風】。黒のセミロングダッフルを前でしっかり閉め、ジーパンをファー付きの茶色いブーツにインしている。
オシャレというより温かさ重視で選んだことは明白だった。
傍には、女が持つには少し大きめのスポーツバックが。それについているタグは、いつか飛行機に乗った時のを取り忘れているんだろう。
どう考えてもガキだ。それなのに、俺を見る女のその冷めた目に、やられた。
「俺は、冬華 雀(とうかすずめ)だ。よろしくな。」
「……よろしくされる覚えはないですけど。」
名前を名乗っただけなのに自分のカバンを抱きしめて後ずさりをするほど、女は俺に警戒心をむき出しにしていた。
それがまた、野良猫を手なずけようとしているみたいで。思わず手が出そうになる。
マジで、ほんと。お持ち帰りしてえ。これが飲みの席だったら間違いなく攫ってんな。
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