第11話

決意して出てきたはずだったけれど、事前に全部調べてからにすればよかった。そんな後悔が押し寄せてくる。結局それって、自分はこれからどこかで生きていきたい。そう望んでるってことでしょ?




「お前、行くとこねえの?」


「まぁね。」




ナンパ男が私の返答に笑う。いいカモだと嬉しいのか、馬鹿にしてるのか。私にとっては笑い事じゃないのに。



「じゃあ話は早い、俺と来いよ。」


「……。」



だからこのナンパ男がナンパ男の"テンプレ"を口にしたとしても、私はそれを真に受けたりはしないんだ。



「どう?」



首を傾げて見せる男は、自分のウリを十分に理解しているらしい。少し長めの前髪が男の頬にかかって、切れ長の目は私を誘うように細められている。



ほんと、黙ってるだけならものすごくかっこいいのに。



「無理です。すみません。」


「えー。」



どう考えてもナンパ男なその軽い言動で損していると思う。



だってこの人の第一声。



『…待ったか?』



全然知らない人に言われると人違いか、ナンパかしかあり得ない。お互い初対面なわけだからこの人は後者にあたるわけで。



そんな胡散臭い人について行ったら私、更に人生最悪なものになると思う。

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