第10話

「どうすればいいのかな?」




気が付けば、そう聞いていた。



「なにが?」



夢だとしても、現実だとしても、男がそう答えるのは当たり前だろう。隣にいるんだから、答えてくれる。だからかもしれない。誰かに聞いてほしいのかもしれない。



「生きるか死ぬか。生きるとしたら何をすればいいのか。」



私って今、哲学的なこと言ってるな、そう思ったら笑えた。



ほんとは分かってる。私には死ぬ勇気はないこと。



海で死ぬとして、打ち上げられた死体はどうなる?森で首を吊ったとして、電車に飛び込んだとして、ビルから飛び降りたとして、もう生を終えた私の死体はものすごく運が良くない限り、必ず親のところへたどり着く。




そんなことはできない。できるはずもない。



自分を殺すことよりも、親に知られてしまうこと、それが私には一番怖かった。



でも、生きるとして。手元にあるこの20万円以外なにもない私は、どうすればいいのか。



親もいない17歳じゃ、きっと部屋を借りるのすら苦労するだろう。


とりあえずバイトで働くとしても履歴書の要らないところを探さなきゃいけないし、給料を振り込む通帳だっている。

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