第8話
「ククッ、涙まみれの顔で強がってても説得力ねえな。」
「っっ、」
男に指摘された通り、私の顔は涙まみれ。すっぴんで行動してたからマスカラで黒くならないだけまだマシなんだろうけど、すっぴんはすっぴんでなかなかの恥ずかしさだ。
鼻水はこの寒さで凍り付いたようでかぴかぴになってるし、何より目が痛い。
寒空の中号泣なんてするもんじゃない。二度としないと心に誓った。
ベンチに少しの揺れを感じて恐る恐る見て見れば、男が私の隣に座っていた。なんで座るのよ。どっか行けばいいのに。内心そう悪態をついてみる。
「大丈夫か?」
だけど、男が柔らかい笑顔で言う言葉の破壊力は意固地な自分をワンパンで砕き、副作用で心臓を刺激したらしい。
頬杖をつく時のさりげなさや男が動く度に鼻に届くタバコと香水の混じったような香りに、思わず心が揺れてしまいそうになる。
だめだ、私。相当弱ってるな。
「はぁ、」
「ハハッ、今度は溜息かよ。」
私の溜息すらツボらしい男が、タバコを指に挟んで笑う。無邪気な笑顔。笑った時に少し幼く見えるそれは、こんな街灯の頼りない明かりでもはっきりと分かるほど整っている。
やっぱり。怪しい。こんなイケメンがこんな場所で優雅にタバコを吸ってるなんて。
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