第7話
ベンチに座ったままじゃ首を痛めてしまいそうなほどの高い身長。嫌味なほどに長い脚はしなやかに動いて、私の座っているベンチに片足を載せた。
高そうな真っ黒なロングコートが包み込む体は程よく鍛えられていて、思わず吸い寄せられてしまいそうなほどの色気を放出している。
「ん?」
男の、ツーブロックの前髪が揺れる。柔らかい笑顔は、私の意識を一気に支配した。
だけど、それも一瞬。
「誰。」
胡散臭さの方がはるかに勝ってしまう。
ど田舎のこんな場所に、大都会の中心を歩いてそうな男が突然発生するわけがない。
しかもこれはナンパっぽいし。
男の見た目と軽さから瞬時に計算した答えは。
『行きずりの女の車でここまで来て、アブノーマルなことをしようとして怒った女に置いて行かれて困ってる。そこへ次のカモっぽい私を発見して宿代にありつこう。』
「魂胆が丸見え。」
「は?」
そんな男にやる金はないので、ツンと顔を背けて無視することにした。
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