第3話

「……これって、入場券で行けそうだよね。」



そう独り言を呟いてしまうほど、この駅は思いの外田舎過ぎた。


「無人駅って、未だにあるんだ。」



それでもきっちりと、切符は箱に入れる辺り、自分は真面目なんだと実感する。



まぁ、いいや。



「これが、新しい私。」



そう言って無人駅を飛び出したのに、3秒で私の笑顔は凍り付いた。




「え。」



何もない。文字通り。あ、1個だけ。街灯付きのベンチがある。



駅の前なのにタクシーもないし、売店もなく、田舎だからか街灯が照らせている場所以外は何も見えなかった。




時刻は、9時。地元ならこれから遊びに行く子たちだっている時間。だけどここみたいな田舎には、そんな不良はいないらしい。



「はぁ。」



とりあえず、ここで夜を明かすしかないらしいんだけど……



「できれば、夜がいいんだよね。」



目標の場所は、近いはず。あてずっぽうで電車を降りたけど、ちゃんと潮の香りがしているから。行くなら、夜がよかった。



だけど……



「っっ、」



思わず寒さとは関係なく身震いしてしまうほど、田舎の暗さは真っ暗だった。吸い込まれそうな、闇。まるでここに入ればすぐに死んでしまうかのように。

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