第4話

「……それもいいかもね。」



自嘲してそう呟いて、とりあえず街灯が照らしているベンチに座ってみる。



きったないベンチ。元は青だったんだろうけど、雨や年月で痛んだんだろう。そのまま座ったら錆が付きそうで嫌だったけど、もはややけになっていた。



寒空の下、何もない場所で、街灯の明かりを見上げた。



何かの虫が集まりまくってるそこは見ていて全然気持ちがよくないはずなのに、温かいその光になぜかホッとしてしまう。



上を向いたまま息を吐いてみれば、それはタバコの煙みたいに真っ白に空へと舞い上がって行った。




「ふ、」



笑みが零れた。その途端、私の目から涙が零れ落ちる。



「ふふっ、ふ、ふふ、」



止まることのない涙は、冷気のせいで頬を冷たく伝う。



その冷たさのせいか、はたまた目を閉じる度に浮かび上がる残像がそうさせるのか、私の心は少しずつ、パキパキと音を立てて崩れていく。



安心してしまったからなのかもしれない。この場所には誰もいなくて、このベンチだって、この駅だって、私を知らない。




「うううう、ああー、っっ、あー、」



だから、私がここで馬鹿みたいに泣いたとしても、それは何の恥にもならないんだ。

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